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NO.6「森は海の恋人」

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汽水域という水域があります。それは河口、つまり川の水と海の水が混ざり合う場所のことを言います。山のミネラルで育った植物プランクトンとそれを食べる海のプランクトンが共生し、さらにそれぞれを餌にする水生生物が共生するという、生命が豊かに息づく水域です。

牡蛎はその海の水を一日200ℓから400ℓも飲み込んで育つのです。

気仙沼に畠山重篤さんという牡蛎養殖業者がいます。父親から事業を受け継ぎ三陸の美味しい牡蛎を育てていました。ところがある年、赤潮で湾内の牡蛎がすべてダメになってしまいました。

同業者が次々と辞めていく中、畠山さんは悩み続け一生懸命研究し、ふと、あることに気づきました。「牡蛎が美味しく豊かに育つのは、山から流れてくる川の水のおかげなのではないか?最近、山が戦後の安易な植林政策のおかげで痩せ始めている。さらに無計画な伐採、乱開発によって山が衰え、それが原因となって山から流れてくる水が栄養失調をきたしているのではないか?」そう考えた畠山さんは、室根山にある村の村長さんのところに出向きました。そして「海の恵みは山から流れてくる栄養のお陰です」と感謝の気持ちを伝えたのです。それが功を奏して、1989(平成元)年に植林祭というイベントを実施することになりました。
そして、このイベントの名前は〝海は森に支えられている〟ということから「森は海の恋人植林祭」と命名されました。川の流域に暮らしている人たちと、牡蠣を作っている漁師とが、価値観を共有しなければいけないということで、その後も毎年この植林活動を続けてきました。すると、海の汚れと共に姿を消していた多くの魚が戻ってきました。森からはミネラルを含んだ豊富な栄養分が川に流れ、更にこれらを含んだ水が川から海に流れ込みます。海ではこの栄養分を植物プランクトンが食べて、光合成をし、酸素を出します。その植物プランクトンを動物プランクトンが食べ、更にこれを魚が食べるという食物連鎖の良い循環が生まれてきました。そして気仙沼の港には、再び日本全国から多くの漁船が訪れ、活気が溢れるようになりました。

しかしその後、東日本に甚大な被害を及ぼしたあの大震災が襲い掛かることになるのですが、その話題はまた別の機会にさせていただきます。

とにかくこのように、海の生き物たちの生命もまた山から流れ込むミネラルが重要なカギを握っているのですね。そこに気づいた畠山さんはみごとと言うしかありません。機会があればぜひ気仙沼の牡蛎を召し上がってみてください。

校長通信「山は海の恋人~卒業式の式辞から」から一部抜粋

校長通信: 山は海の恋人~卒業式の式辞から
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